谷田貝 一男     

資料
昭和20年代 三共電器 6V−15Wダイナモ
昭和20年代 三洋電機 6V−6Wダイナモ
昭和28年  サンヨーサイクルニュース2月号
「運ぶ自転車 −昭和20〜30年代の運搬用自転車−」展にて公開


[ダイナモ製造の歴史]

 最初の自転車用ダイナモランプは明治30年、イギリスのロンドンで開かれたナショナルサイクルショーに出品されたホルターライトです。一般商品として市場に広く出るようになったのは明治44年頃からです。
日本では大正11年頃に国産化が始まり、松下電気が昭和8年にビームライト製作所と提携して発売したナショナル発電ランプによって普及のきざしが見え始めましたが(写真1)、その後の戦時体制強化のため製造数並びに質的発展は止まってしまいました。
 そして終戦間もない昭和21年6月に三ツ葉電機製作所が自転車用発電ランプM1型(4V−0.7W)を発売し、同年10月には小倉製作所が自転車用ランプの製造を開始しました。昭和22年に入ると5月にサンヨー電機が47型(7.5V−4W)を発売するほか、12社が19万個を製造し、昭和23年には16社が124万個を製造するに至りました。


(写真1)
昭和8年5月5日発行
西部輪界新聞の広告
表1 昭和22年〜25年における生産台数
社名
昭和22年
昭和23年
昭和24年
昭和25年
小倉製作所
42861
260336
142715
36130
48042
三電機精密工業
  
 
 
15701
15701
平田工業
 
 
5710
3650
9360
関口工業※1
18000
60850
46426
25733
151009
板垣※2
16067
182410
320142
326243
844862
三共電器
 
108750
183806
213137
505693
三つ葉電器
9600
42200
53269
72267
177335
ハツネ電機製作所
8940
34654
36148
36021
115763
三洋電機製作所
31530
258840
525984
1020975
1837329
三菱電機
23806
126720
38827
 
189353
常盤製作所
900
11000
8636
 
20536
国産電機
20500
15300
 
 
35800
不二越鋼材
3143
20371
 
 
23514
弥生商会
12656
50449
29651
 
92756
早川機械工業
 
37898
53252
 
91150
東洋計器電機
 
12053
7122
 
19175
タカヤス電機工場
 
1177
21459
 
22636
三和工業※3
5611
25961
23469
9503
64544
193614
1248969
1496615
1759360
4698558

※1:昭和24年より理研電気工業所 ※2 昭和23年より三輝工業
※3:昭和25年よりタヒチと社名を変更


梶原利夫「日本の自転車灯火 堤灯から発電ランプまで」
 
その後も製造個数は着実に増えていきましたが、まだ品質、性能あるいは技術上に未熟さがあり、その結果として改良に次ぐ改良へと向かわせ、その激烈さは続々と生産者の脱落を生み、わずか10年の間に16社から6社まで減少してしまいました。

[ダイナモの原理]
導線を円筒の周りに巻いたものをコイルといいます。このコイルの中に磁石を入れるか、コイルの外側に磁石を置くかして、コイルか磁石のどちらかを動かすと電磁誘導という現象が起こり、導線に電流が生じます。この現象を起こさせる装置がダイナモです。
生じる電流を大きくするためには、2つの方法があります。1つはコイルか磁石の動かす速さを速くする方法です。これは自転車のスピードと関係します。もう1つの方法はコイルを作る導線の太さを太くしたり、巻き数を増やしたり、磁石を磁力の大きいものにする方法です。これはダイナモの改良によります。
[ダイナモの電圧と出力]
電圧(単位:V)は電気を起こす力で、3Vよりも6Vのほうが力は大きくなります。電圧が大きくなりますと、それによって生じる電流(単位:A)も大きくなります。この電圧と発生した電流の数値を掛け算したものが出力(電力ともいいます 単位:W)で、ライトの明るさを表し、2Wよりも3Wのほうが明るくなります。
[ダイナモに関する国家規格]
自転車用ダイナモに関する国家規格が昭和23年に初めて制定されましたが、当初はその規格はめまぐるしく変わりました。このことからも当時のダイナモの性能あるいは技術上にまだ未熟さがあったことがわかります。

@昭和23年3月  日本輸出規格として制定
4V1W 6V2W 7.5V3Wの3種類
時速15kmのときの端子電圧で表し、速度の変化による数値の許容差は±10%
A昭和25年9月 日本工業規格
6V3W、8V4W、10V5W、12V6W、16V8W、20V10Wの6種類

4V1W、6V2Wは国内、輸出用とも需要がないため削除。 国内用は明るい高出力、輸出用は尾燈付きが要望されたため、 8V4W、10V5W、12V6W、16V8W、20V10Wが追加,

7.5V3Wは輸出の実態に併せて6V3Wとした。
時速15kmのときの端子電流を0.5Aとし、許容差は±5%
B昭和28年8月
6V3W、6V4W、6V5W、6V6W、6V8W、6V10W、8V4W、10V5W、12V6W、16V8W、20V10Wの11種類
時速15kmのときの端子を6Vとする定電圧制とし、その他の電圧は暫定的に存続
C昭和30年1月
6V3W、6V4W、6V5W、6V6W、6V8W、6V10Wの6種類
8V4W、10V5W、12V6W、16V8W、20V10Wが廃止

[ダイナモと電球の改良]

 当初はダイナモカバーの内側に導線を巻いてコイルを作り、その中心にタイヤと連動して回転する鉄心(磁石)を配置しました。この構造ではダイナモ全体が太く重くなってしまう上に、大きな回転数が必要となります(写真2)。このため、ダイナモの規格も昭和20年代前半は電圧の大きさに較べて出力が小さくなっています。

写真2 三洋電機の6V−15W用ダイナモ
左がダイナモカバーに巻かれたコイル右が鉄心で左端にベアリングが付いている

 

 三洋電機が昭和28年2月発行に発行した「サンヨーサイクルニュース」にダイナモケースを小さくするための特許が図解入りで解説してあります(写真3)。この実物が写真4です。コイルはダイナモの底に置き、このコイルの中を横向きに鉄板が通り、その鉄板が両端で直角に折れ曲がって上に伸び、コイルカバーの周囲を取り囲んでいます。この中を鉄心が回転します。カバーの周囲にコイルがないため、ダイナモ全体が細くなっています。また従来よりも少ない回転数でも大きな電圧を発生させることが出来ますので、鉄心軸の底に付いていたベアリングも不要となりました。

 
写真3 ナショナル発電

写真4 三洋ナショナル6X−6W用ダイナモ

左:ダイナモカバーにコイルがない
中:写真3の実物
右:鉄心でベアリングが付いていない

こうした改良によって昭和28年に、ダイナモの規格が6Vの定電圧制になりました。これは次の理由によるものです。
ア. ダイナモの機構上から尾燈端子の必要がなくなった
イ. 従来の規格と比べて、低電圧のほうが電球の同一寿命に比べて効率が増加する
ウ. 速度の変化に対する出力電圧の変動を、電圧の高い場合に比べて少なくすること ができる
エ. 負荷の変動に対して発電機出力の影響を少なくすることが出きる
昭和28年1月、日本発電ランプ工業会は当時の通産省から委嘱されて、イギリス製ルーカス、
スイス製ルシファー、スイス製 ダイノと国産品との製品比較を行い、そのような結果が出されました。
ア. ヘッドライトの外観・形状が6V3Wでは国産品のほうが小さい
イ. ダイナモ内の磁気回路機構は国産品も外国産もほぼ同等
ウ. ダイナモの加工に関して、国産品のほうが無駄が少ない
エ. 電球の明るさは国産品のほうが明るい
オ. 使用材料は外国品のほうが豊富

 この時点で、国産品の品質が一流の外国品と遜色のないものであることが海外でも認められることになり、27年に13万8000個であった輸出量が28年には一挙に24万6500個と2倍に伸びました。この時期は一般に輸出不振で自転車本体の輸出も伸び悩み、大手製造会社が倒産の危機に直面していたときでしたので、通産省は積極的に発電ランプの輸出に力を入れました。外貨獲得と通商振興という見地から29年には輸出適格業種並びに加工貿易原材料対策品目に指定をしました。
 さらに電球の改良も同時期に進みました。電球に高い電圧をかけると明るくなりますが、それにともなって温度も高くなるため、フィラメントの寿命も短くなってしまう欠点があります。また電圧が変動すると明るさや寿命などの特性も大きく変動する性質があります。自転車では速度の変化が激しいため電圧も激しく変化します。昭和25〜26年、ガスを入れた自転車用の電球が開発され、これによって明るさが約2倍になりました。

[自転車付属品としての地位の確立]
こうした業界の努力と法的措置の結果、国内では昭和30年には昭和22年のときの約17倍337万1700個を製造し、世界の60ヶ国に90万9481個を輸出するに至りました。

(参考文献)
サンヨーサイクルニュース 三洋電機 昭和27年〜31年
三ッ葉電機製作所50年史 ミツバ 平成8年
梶原利夫「日本の自転車灯火 堤灯から発電ランプまで」 自転車第72号 日本自転車史研究会
日本工業規格集自転車編 自転車産業振興協会 昭和50年
自転車用発電ランプのはなし 自転車産業の歩み第1集 日本輪界新聞社 昭和32年
(ダイナモ提供)
東京都狛江市 長寿自転車店 谷田部克己氏

(自転車文化センター  学芸員)