フランス  レンヌの大規模自転車貸事業について

日本自転車普及協会
 

1998年に世界で最初に行われた大規模自転車貸事業

 フランスパリ市から西に約300km離れたところにあるレンヌ市は1998年に世界で最初に大規模自転車貸事業を行った都市である。このときの貸自転車事業システムを開発し、運営したのは屋外広告業者であるクリアチャネル社で『ヴェロアラカルト』という愛称が付けられた。このときはレンヌ市の中心部に25ヶ所のステーション(自転車の貸し出し返却を行うところ)が設置され、計200台の自転車が配備された(写真1・2)。

 

写真1 『ヴェロアラカルト』のステーション (写真提供はマルテール氏(『ベロスター』配送センター主任)

 
写真2 『ヴェロアラカルト』に使用された初代自転車

 自転車を利用するにはパスが必要であったが、このパスは事前に登録し、23ユーロ(1ユーロ=120円とすると、2760円)の保証金を支払うことで入手ができた。利用料金は無料で、1回のレンタル時間は最高2時間までで、1日に何回でもレンタルが可能であった。このパスには磁気による利用者の個人情報が入っていて、自転車を固定しているブロックに入れると、自転車の先端がはずれ、乗ることができた。
『ヴェロアラカルト』に使用された自転車はインターサイクル社製で。前輪が20インチ、後輪が24インチと、前輪がやや小さかった。このシステムにはステーション以外でも止められるように鍵が付けられていたが、その鍵の紛失が多かったことが問題であったという。
1998年の営業開始時点では2000人が登録してパスを持っていた(表1)。
                 表1  パス所有者の居住地


レンヌ市民

1320名

レンヌ広域圏に住む人

280名

レンヌ市内の大学に通う学生

400名

合計

400名

 その後のアンケート調査によると、利用者の92%が「大変満足している」「満足している」で、利用者の46%が定期的に利用していた。利用者の平均年齢は31歳で、自転車を利用する目的は表2のとおりであった。
                       表2 利用目的


通勤

24%

通学

15%

レジャー

22%

買い物

27%

運動

2%

その他

10%

合計

100%

 レンヌ市とレンヌ広域圏は、フランスでは自転車利用促進政策が先進的に行われており、1980年までにクリスチャン・ブノア市長(仏自転車宣言都市協議会の創設者の一人)は計190kmの自転車レーンを建設している。2009年度における自転車関連予算は36万5千ユーロ(4380万円)で広報等にあてられている。同年度における自転車の利用率は5%で、自転車利用者の死者は3名を数えている(2008年3月より、レンヌ市で自転車を担当しているメダール市会議員談)。

フランス、レンヌにおける世界最初の大規模自転車貸事業再入札

 この『ヴェロアラカルト』の運営に関するクリスチャネル社との契約は1998年から2009年までの11年間契約であったため、事業運営会社と利用都市との契約の更新に関する最初の例として、前回と同じ事業社が継続するかどうかが注目された。このため、事業受注者の変更に備え、2009年に、『ヴェロアラカルト』のシステムは全て解体された。残された自転車(まだ使用に耐える自転車でも)は、非営利団体の手でリサイクルされ、アフリカに送られたという。
現在フランスにおけるコミュニテイサイクル事業を展開するのは、クリアチャネル社、JCドコー社、ケオリス-エフィア社、ヴェオリア社の大手4社と、スムーヴ社を始めとする数社の企業であるが、これら全ての事業社が入札に参加したといわれている。2009年までの『ヴェロアラカルト』はレンヌ市が事業主体者であったが、この入札の事業主体者はレンヌ広域圏であった。
落札したのは、ケオリス-エフィア社の『ベロスター』で、2009年から2017年までの9年契約である。入札から落札にわたる経緯の詳細は公開されていないため、不明の点も多いが今回の取材に応じてくれた関係者の話から推定すると、以下のように思われた。
レンヌ市は事業開始18ヶ月後に、1日に付き2900回の利用件数に達することを要求していた。これに対して、クリアチャネル社はレンヌ市の要求に応じたが、ケオリス-エフィア社はその要求の他に、利用件数に達しなかった場合には罰金を支払うことを提案してきたという。ケオリス-エフィア社は既にレンヌ市の交通事業に参加しており、この罰金制度を同市で運営する地下鉄とバスに既に適用していたのであった。また大手のクリアチャネル社とJCドコー社が落札できなかった理由の1つにステーションの設置箇所が既存の交通網と必ずしも連動していないということがあったのではないかとも言われている。

フランス、レンヌの『ベロスター』大規模自転車貸事業

 『ベロスター』の営業は2009年9月13日に開始された。当初81のステーションと900台の自転車が配備され、最終的には117ヶ所のステーションと1285台の自転車が設置される予定となっているが、2011年3月31日の時点ではステーションが2箇所増えて83になったものの、自転車はまだ900台である(写真3・4)。ケオリス-エフィア社が既に地元の交通機関を運営していることもあり、ステーションの85%は主要交通機関(鉄道、地下鉄、市内バス、遠距離バス)の停車駅のすぐ近くに設置されており、残りの15%は住宅街に近い場所、商店街、ビジネス地区等に設置されている。

 

写真3 『ベロスター』のステーションと配送車
ステーションはコンセントが近くにあり電気の供給が容易で、毀損の被害を減らす ために人通りの多いところに設置されている。

 
写真4 『ベロスター』自転車

 ステーションはレンヌ市中心部では300メートルおきに設置され、郊外ではどんなに遠くても500メートルおきに設置されている。
 更に便利なのは、ケオリス-エフィア社がブルターニュ地方で幅広く交通事業(地下鉄、市内バス、遠距離バス)を展開しているため、同地方で共通なパス『コリゴ』が使用できることである。これは、フランスでもここだけのサービスとなっている。『ベロスター』を利用できる『コリゴ』パスには、年間パス、週間パス、1日パスの3種類があるが、これを入手して自転車を利用するためには@パスを購入するための料金(表3)、A150ユーロ(18000円)の保証金、Bレンタル料(表4)のすべてが必要となる。

                        表3 『コリゴ』パス購入料金


パスの種類

購入代金

年間

一般客

スター(レンヌ市内交通機関共通)パス所有者

30ユーロ(3600円)

20ユーロ(2400円)

1週間

5ユーロ(600円)

1日

1ユーロ(120円)

                                       (1ユーロ=120円とする)
                表4 レンタル料金


時間

 料金

最初の30分間

 無料

30分間後から1時間後

 1ユーロ(120円)

1時間後から2時間後

 2ユーロ(240円)

2時間後から3時間後

 3ユーロ(360円)

3時間後から6時間後

10ユーロ(1200円)

6時間後から10時間後

24ユーロ(2880円)

10時間後から24時間後

48ユーロ(5760円)

 『ベロスター』は24時間営業となっている。『ベロスター』の配送センター主任であるマルテール氏によると、『主な利用状況は平日(月曜〜金曜)は、8時〜9時、12時〜14時、17時〜19時の3回の利用ピークがあり、土曜は買い物に利用する人が多い。日曜は一般的に利用件数が少ない』という。このように自転車の利用状況が日によっても、時刻によっても変わるので、『ベロスター』を運営するケオリス-エフィア社だけでなく、すべての運営会社は自転車配備の難しさを承知しているという。
『ベロスター』で使用されている自転車は、ケオリス-エフィア社がオルレアン市(パリから南に約110kmの小都市)で使用した自転車と似ており、同じサイクルヨーロッパ社製である。スティール製の太いパイプを使用したフレームは男女兼用のシングルループ型で重さが約16kg、サイズは一つしか用意されていない。全車がチェーンを使わない方式を採用しているが、これはチェーン方式よりも50%程度維持費が少ないからである。
『ベロスター』配送センター主任マルテール氏によるとレンヌ市の場合には自転車の毀損
所については、タイヤとサドルをナイフで切り刻むというケースが大変多いとのことであった。そうした毀損行為に対する最も有効な手段は、迅速に対応することであるという。例えば、自転車をブロックに固定する部分(写真5)が壊される場合には、その部分をすぐに補強することである。壊してやろうという悪者は、それがもう簡単に壊れない、壊せないとわかると、すぐ壊そうとするのをやめるとのことである。
さらにマルテール氏によると貸自転車事業システムを開発するための最初の設計時でも、設計の変更時でも、どの部門が最終的に壊れるようにするかを決めることが重要であるという。自転車を固定するブロックか、自転車の固定部門そのものか、あるいは、自転車のフレーム自身かを決めるが、最終的には、自転車のフレーム自体が壊れるれるように設定し、それに合わせて設計するとのことである。それは、自転車のフレームは40ユーロ(4800円)程度しかかからず、圧倒的に安くつくからとのことである。 

 
 
 
写真5 『ベロスター』固定部分
 

 大規模自転車貸事業は当初パリのヴェリブ自転車が典型的な見本といえるが、屋外広告業者による市場獲得のための『おまけ』として始まったが、レンヌ市の『ベロスター』に象徴されるように、交通事業者は自転車を交通機関の一部として捉えるようになった。ケオリス-エフィア社がコミュニテイサイクル事業を展開している都市は、オルレアンやレンヌを初めとして、既に10都市以上に上っている。このように、レンヌ市の例が大規模自転車貸事業が公共交通機関の一環として変換し始めたことを示しているように思われてならない。
レンヌ広域圏&ベロスターの連絡先は以下のとおり。

Monsieur le President
Hotel de Rennes Metropole
4, avenue Henri-Freville
35207 RENNES CEDEX

France
電話+33 2 9986 6248
http://www.rennes-metropole.fr/
参考HP
フランス、レンヌの『ベロスター』HP:http://www.levelostar.fr/

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