ベルギーの首都、ブリュッセルにおける朝夕のラッシュ時の交通渋滞は、他のヨーロッパの大都市と同じか、むしろそれ以上ではないかとよくいわれている。通勤の平均距離が3km未満の人が65%を占めているのに、通勤する人の57%は自動車を使用しているという調査結果が発表されている。

 このため、自動車に代わる通勤手段の奨励対策が課題になっているが、その一つとして自転車で通勤する人に支給される手当てに関して、1kmに付き0,15ユーロ(1ユーロ=145円とすると22円)までは所得税を免除するという法律(1997年8月8日付け所得税法改正案)が可決された。又、社会保険料も免除されることになった(1999年4月1日付け社会保険法改正案)。
 例えば、片道5kmを毎日自転車で通勤する場合、1日で220円(10km×22円)、1ケ月に18,2日出勤すると仮定すると、約4.000円(220円×18,2日=4.004円)となり、更に所得税等免除なので無視できない額となる。なお、2002年になって所得税等の免除額に年間150ユーロ(21.750円)という上限が設定された。

 但し、自転車通勤手当を支給するということと、その額については、法律で義務付けられているわけではなく、あくまでも雇用主の合意が必要である。この通勤手当は自宅から会社に行く場合には勿論であるが、例えば自宅から駅まで自転車で行き、駅から会社までは電車を利用するという場合でも、自転車を使用する自宅と駅までは支給の対象になる。

 ブリュッセル市では自動車以外の通勤手段を更に奨励するために2004年7月1日付けで大気汚染防止法(1999年3月25日制定)を改正した。これにより、ブリュッセルにある200名以上の従業員を雇っている全ての会社は、社員のための通勤プランを作成することが義務付けられた。その典型的な例としてブリュッセル港湾公社の通勤プランがあげられよう。同プランの中で自転車通勤手当(1kmに付き0,15ユーロ)を支給するということ以外の自転車関係の改善点は以下のとおりである。

 
既に存在するシャワー室の横に自転車利用者のための更衣室の設置。
6台収容可能な駐輪施設の設置。
15台の自転車を業務用に購入。
自転車使用者専用ウエア(雨合羽)24着の購入。
会社の前の港湾通り沿いにある自転車道路の完成をブリュッセル市に要請。

 このプランにより自動車以外の通勤手段(公共機関、自転車等)を選んだ職員が7%増えたと報告されている。以下、実際に自転車で通勤している2人の例をあげよう。

GRACQ会長のデエイユ氏はブリュッセル北東郊外のエベール町に住んでいるが、市内中心部にある職場(デクシア銀行)まで毎日自転車(片道5km)で通勤している。同銀行では自転車通勤手当(1kmに付き0,15ユーロ)を支給している上に、シャワー室と更衣室(自転車利用者だけでなく、歩行者とオートバイ利用者の分も含めて)が用意されている。自転車で通勤する人は全社員9.000名の内の50名(全体の0,5%)程度とのことであった。
エベール町にあるゾーン5344警察署に務めるミショー警部も通勤に自転車を利用している。警察署はエベール町役場と同じ建物の中にあるが、その地下に駐輪場とシャワー室&更衣室が完備している。ただ、自転車通勤手当を請求するためには、自宅からの出発時間、コースの詳細、距離、職場への到着時間、所要時間等を記入したリストが必要で、その作成に時間がかかるのと、支払いがいつも数ヵ月後になるので困る、とボヤいていた。
 

 自転車による通勤をより一層奨励するには、通勤手当以外にも駐輪場(屋根付き、盗難予防対策が施された)の整備やシャワー室・更衣室・乾燥室(雨で濡れた衣類等を乾かすため)等の設置が必要となろう。ただ、ブリュッセルの都心部ではスペースの問題があり、簡単ではないと思える。
所得税等の免除措置や通勤プランの作成義務付けにより自転車通勤がどのくらい増えたのか、あるいは自転車通勤手当を支給している会社の割合等々に関する具体的な統計は無いので、詳しくはわからないのが現状である。
ブリュッセルに本部を置くEU(欧州連合)には25.000人の職員が務めているが、その内の1.250人(全体の5%)が自転車で通勤している。ブリュッセル市交通政策局によれば、2005年9月現在で、自転車通勤客は全体の1%(5.000人)とのことである。




 エベール町の警察署(ゾーン5344と呼ばれ、エベール町と他の2つの町をカバーしている。全体の人口は16万人を数える)管内での交通事故による死者は4名(2004年度)であった。その内2名は自転車が関係し、1件は生コン車の横転事故、他の1件は交差点での信号無視(自転車に乗った子供が轢かれて死亡)によるものであった。2005年度は死亡事故ゼロ、とのことであった。なお、アッペルバウムさんによると、自転車集団登校時には、転倒等による軽傷等はあるにしても、いわゆる事故の部類は皆無とのことであった。

 このように、クレール・ビーブル校の自転車集団登校は、同校の父兄会を中心に、学校(先生)、エベール町、ブリュッセル市(交通局)、自転車関係団体(GRACQとPRO VELO)、警察が一体となって協力しているからこそ、成り立っているといえよう。クレール・ビーブル校の父兄会は、自転車集団登校を通して自転車の普及に貢献したということで、2004年5月にブリュッセル市より「ゴールデンハンドル賞」を贈られている。

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