フランスで特許法が発布されたのはフランス革命が始まってから2年後の1791(寛政3)年であったが、同じ年に特許局が創設された。第2次大戦後の1951年に特許庁(正確に訳すと仏国立産業財産権庁となる)となったが、特許だけでなく、意匠や商標も担当している(写真1)。

写真1.パリ市内北部、クリシー広場の近くにある仏特許庁の建物。

 仏特許庁は産業財産権に関する一般向けの啓蒙活動の一環として、更にツール・ド・フランス百周年を記念して、自転車ポスター展(展示会の正式な名前はベロラマ、VELORAMA)を2003年7月から開催している。同展を手がけたのは同庁資料情報部で『産業財産権の活用』担当のジェラール・ビンテール氏である(写真2)。

写真2.自転車ポスター展を手がけたジェラール・ビンテール氏(仏特許庁資料情報部『産業財産権の活用』担当)。

 自転車ポスター展の会場は特設会場ではなく、特許庁の中央ホール、廊下(写真3〜6)、会議室(写真7)の壁面を利用している。会期も特に決まっているわけではなく、現時点では無期限とのことである。ポスターは全てオリジナルではなく、写真のコピーである。33枚のポスターが展示されているが、その内の22枚はパリ市立フォルネ図書館が、残りの11枚は仏国立広告博物館がそれぞれ提供している。従ってこれらのポスターの所有権はあくまでも両館にあり、特許庁は使用料を払って展示しているとのことである(ビンテール氏談)。そのためもあり、ポスター一枚一枚の写真はこの所有権の問題がかかってくるため、撮影が許可されなかった。

写真3。一番右側はロッシェ自転車(Cycles Rochet)、その左側はド・ディオン・ブートン自転車(Cycles De Dion-Bouton)。正面奥はスカンディア自転車(Skandia)。
  

写真4.左からベアリングス自転車(Bearings)、ラディオール自転車(Radior)、
フェビュス自転車(Phebus)、シューゼ自転車(Cycles Chouzet)。ベアリングス自転車のポスター上部にある矢印(CONSEIL)は特許等に関する相談窓口の場所を指している。

写真5.左からカペル自転車(Cycles Capelle)、オムニオム自転車(Omnium)、コミオ・オートバイ(Comiot)、レオン・マン自転車(Cycles Léon Mans)。

写真6.左はハンバー自転車(Humber)、右はジョルジュ・リシャール自転車
&自動車(George Richard)。

写真7.左はランブラー自転車(Rambler)、右はクレバー自転車(Clever Cycles)。

 ポスターは自転車メーカー27社とオートバイメーカー1社の計28社が作成したものである。展示されているポスターの数(33)とメーカー数(28)が一致しないのは、いくつかのメーカーが違ったポスターを2枚以上作製しており、それらが展示されているためである。自転車メーカー等のリスト(会社名とブランド名によるアルファベット順)は以下のとおり。

 エグロン自転車(Cycles Aiglon)、アルション自転車(Alcyon)、アルミニオム自転車(Cycles Aluminium)、オート・モト自転車(Cycles Automoto)、ベアリングス自転車(Bearings)、カペル自転車(Cycles Capelle)、シューゼ自転車(Cycles Chouzet)、クレバー自転車(Clever Cycles)、コミオ・オートバイ(Comiot)、クレッセント自転車(Crescent Cycles)、ド・ディオン・ブートン自転車(Cycles De Dion-Bouton)、デエス自転車(Déesse)、ジョルジュ・リシャール自転車&自動車(George Richard)、グラディアトール自転車(Cycles Gladiator)、ハンバー自転車(Humber)、ラ・フランセーズ自転車(La Franéaise)、 レオン・マン自転車(Cycles Léon Mans)、メントール自転車(Mentor)、ノベルティ自転車(Novelty)、オムニオム自転車(Omnium)、フェビュス自転車(Phebus)、ラディオール自転車(Radior)、ランブラー自転車(Rambler)、ロッシェ自転車(Cycles Rochet)、スカンディア自転車(Skandia)、スネル・アメリカン自転車(Snell American Cycles)、ビクトリア自転車(Victoria)、ジム・シュトロック自転車(Zim Strock et Cie)。

 ポスターの中には、ミッシュ(オート・モト自転車)、ミスティ(ド・ディオン・ブートン、原付3輪車)、パル(デエス自転車、ラ・フランセーズ自転車、フェビュス自転車)等の当時有名であった作者の作品も含まれていた。
特許庁と自転車ポスターとの直接的な関係について尋ねると、『調査してわかった限りですが、自転車やオートバイのブランド名に関する商標(特許庁が担当する)の登録日を説明文の中に記していることです』とのことであった(ビンテール氏談)。計28社の内の11社の登録日がわかっているが、それは以下のとおりである。

  エグロン自転車(Cycles Aiglon)、1900(明治33)年4月5日。
  アルション自転車(Alcyon)、1895(明治28)年7月20日。
  オート・モト自転車(Cycles Automoto)、1903(明治36)年12月15日。
  ド・ディオン・ブートン自転車(Cycles De Dion-Bouton)、1895(明治28)年1月29日。
  デエス自転車(Déesse)、1896(明治29)年5月27日。
  ジョルジュ・リシャール自転車&自動車(George Richard)、1895(明治28)年5月16日。
  グラディアトール自転車(Cycles Gladiator)、1892(明治25)年4月29日。
  ハンバー自転車(Humber)、1891(明治24)年2月11日。
  ラ・フランセーズ自転車(La Franéaise)、1891(明治24)年3月31日。
  フェビュス自転車(Phebus)、1889(明治22)年6月11日。
  ロッシェ自転車(Cycles Rochet)、1894(明治27)年8月29日。

 最後に、ビンテール氏は、『この自転車ポスター展を日本の特許庁や自転車文化センターとタイアップするなりして東京で開催できたら素晴らしいでしょうね』と語ってくれた。


 仏特許庁主催自転車ポスター展の概要は以下のとおり。

住所
INPI (Institut National de la Propriété Industrielle)
26 bis, rue de Saint-P?tersbourg
75008 PARIS
France
電話
+33 1 5304 5304
HP
www.inpi.fr 
開館時間
月〜金。9h00〜18h00.
入場料

無料。 写真撮影要許可(ビンター氏)。 

(小林恵三)

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