フランスにおける第1回の交通安全週間は警察庁の主催により2000年10月23〜29日に開催された。その後毎年1回、秋(10月末)に開催されるようになったが、2002年にシラク現大統領が再選された際に、ガンの撲滅と身体障害者の保護と共に、交通安全運動の強化を3つの大きな課題の一つとしてとらえたために、一躍国民の関心が高まった。
   第7回交通安全週間は2006年10月16〜23日に開催されたが、今回の運動の基本は『都市部における交通安全』であった。全国で合計3,000のイベント(速度取締り、検査、交通安全教室、講習会、映写会、ポスターの配布等々)が催され、国交省を始めとする関係省庁や多数の地方自冶体、交通安全協会等関係団体、郵政公社等の企業が協力した。
  パリでは警視庁が中心になって、『2輪車の事故予防』と『年配の歩行者の安全』を重点として運動が推進されたが、その主なプログラムは以下のとおりであった。

10月16日(月)
* 2輪車に関する義務事項等検査(ヘルメットや排気管等)。8h00〜11h00。バスティーユ広場にて。軽  い違反の場合は、直ぐに罰金を払うわけではなく、期限内に規定どおりに直せば、違反を取り消してくれる。ただし、信号無視や速度違反等は対象外であった。
* 年配者向けの交通安全教室。第4区の老人ホームや10区等の社会福祉センターで警察官による講習(安全な車道の横断方法や車道と歩道の違い等について)が開かれた。

10月19日(木)
* 郵政公社等の企業や役所における、それぞれの職場で使用される移動手段やその使い方に特有な交通事故の予防に関する講習。


* 第15区にある青少年情報資料センターにおける飲酒運転の危険性等に関する広報活動。パリ市交通安全協会の主催で、かけると酔ったのと同じ状態になる特殊眼鏡を使用し、飲酒運転の怖さを訴えた(写真1)。

写真1.
パリ市内北部、クリシー広場の近くにある仏特許庁の写真1.パリ第15区にある青少年情報資料センター。主催はパリ市交通安全協会。かけると酔ったのと同じ状態になる特殊眼鏡を使用して、コーンの間を歩こうとするが、思い通りにならず、直ぐにコーンにあたってしまう。

 10月20日(金)
* パリ市役所の職員や一般向けに運転免許の減点制度や飲酒運転の危険性に関する啓蒙活動。
* 身体障害者の保護に関する啓蒙活動(身体障害者用に指定された特別スペースの尊重等)。
* セーヌ河に係留された『ル・チャールストン』船上で開かれる若者向けパーティ。『アルコール抜きでも楽しむことができます』、という趣旨でさまざまな催し物が開かれた。

10月21日(土)
  第6区市役所前にあるサン・スュルピス広場(ダビンチコードで一躍有名になったサン・スュルピス教会前の広場)にて。パリにおける交通安全週間のメイン行事として、各関係組織のテントが設置され、以下のイベントが行われた。
  
参加関係組織

*パリ警視庁交通局交通安全課交通安全企画情報室。交通安全企画情報室は、パリ市民を対象に交通安全に関する講習会やイベントを行い交通安全運動を推進している。又、交通安全に関する講習会用の教材(CD等)や幼児向けの交通安全教育用スゴロクやパズル・ゲーム等を考案し特許も取得している。同室はフランスでもパリの警視庁にしかない特別なセクションである。8名の室員からなり、室長はラマッド大尉。
* 第6区警察署。交通安全週間中に管内で軽い違反をして捕まった人でも、ここに来て簡単な講習を受け、簡単な質問に答えることができれば、その場で違反を取り消してもらえた。この日だけで、計100名がその恩恵に与かった。2名の婦警さんが親切に応対していた(写真2)

写真2.交通安全週間中に軽い違反をした人が簡単な講習を受けている。その後の簡単な質問に答えることができれば、その違反を取り消してもらえた。

 * 仏交通安全協会パリ支部。同協会は交通事故全般の防止を目的に生命保険会社が中心となって1949年に設立された民間の組織で、会員は30万人を数える。同協会パリ支部長のメラル氏等が同協会発行の各種の交通安全パンフレットを配布していた。

* 災害防止センター。プラスチック製の上半身を使用し、負傷者や病人に対する応急措置の実演を実施していた。
* 交通事故対策協会。交通安全に関する質問集を配布していた。全部の質問(計10問)に正確に答えた人には、災害防止センターが主催する応急措置講習会に無料で参加できる引換券が贈られた。

  イベント

* 子供向け自転車教室。会場の広場に設けられたコースでは、近所の子供が自転車で様々な障害物を通り抜けるゲームを楽しんでいた。主催はパリ警視庁交通安全教育情報室で、同室に所属する3名の警察官がヘルメットのかぶり方からコースの紹介まで親切に指導していた。この1日だけで、計30名の子供が参加した(写真3&4)。

写真3.
ヘルメットをしっかりかぶり、これからスタートする近所の子供。
 
写真4.
子供向け自転車教室。2枚の板の間を走る。

* かけると酔ったのと同じ状態になる特殊眼鏡を使用しての歩行。主催は仏交通安全協会パリ支部(写真5)。

写真5.仏交通安全協会パリ支部主催。特殊眼鏡をかけて、コーンの間をスラロームする遊び。後方はダビンチコードで一躍有名になったサン・スュルピス教会。

* 衝撃テスト。時速10kmで障害物にぶつかる時のショックを体験できるが、結構激しかった。前方でぶつかる時にはわかっていたのでそれ程でもなかったが、その後、バックでぶつかった際には構えていなかったので、そのショックは結構以外で、安全ベルトの重要性を身をもって感じた。主催はパリ警視庁交通局交通安全課(写真6)。

写真6.
時速10kmの衝撃テスト。“模範演技”を行う仏交通安全協会パリ支部長のメラル氏(前方)とパリ第6区区長のルコック氏。

 秋の交通安全週間運動というと日本では広報活動を盛んにするので盛り上がるが、パリでは広報費をあまりかけないためか、人出はいまいちだったように思えた。それでも、第6区警察署のテントには計100名が講習を受けに来たし、子供向け自転車教室にも30名の子供が参加したため、ラマッド大尉を始めとする主催関係者は満足そうであった(写真7)。

写真7.パリにおける交通安全週間のメイン行事が終わり、ホッとする区役所や警察の主催関係者。左より、仏交通安全協会パリ支部長のメラル氏、第6区警察署の婦警さん(2名)、パリ第6区区長のルコック氏、子供向け自転車教室担当の警察官2名、ラマッド大尉(パリ警視庁交通安全企画情報室長)。

  日本やフランスだけでなく世界各国で交通安全週間が開催されているが、この4月(2007年4月23〜29日)にジュネーブ(スイス)で、第1回世界交通安全週間が開かれることになっている。2005年10月26日の国連総会で開催が決定されたが、主催は国連と世界保健機構で、特に青少年の交通安全と事故による後遺症や身体障害問題が主要テーマとなっている。この週間中に以下の2つのメインイベントが予定されている。

* 4月23&24日。世界青少年会議。
* 4月24&25日。世界交通安全フォーラム。

  国連の全加盟国はこの第1回世界交通安全週間が成功するように、それぞれの国での関連イベントを主催し、盛り上げるように要請されている。

1)仏国交省交通安全局の公式サイト。http://www.securiteroutiere.gouv.fr
2)パリ警視庁の公式サイト。http://www.prefecture-police-paris.interieur.gouv.fr
3)仏交通安全協会の公式サイト。http://www.preventionroutiere.asso.fr


このページのTOPへ↑ 


Copyright, 1998-2006 Bicycling Popularization Association of Japan. All rights reserved.