ル・モンドールはフランス中央部オーベルニュ地方にある小さな温泉町(人口1682人。パリから南に462km)である。ルグー氏(56才)は銀行員であったが、趣味でクラシックカーを収集していた。ただ、クラシックカーのコレクションには資金やスペースがそれなりに必要であり、だんだん難しくなったことと、アンチーク自転車の方がいろいろな意味で易しかったこともあり、今から30年前に自転車の収集に移行したとのことである。又、クラシックカーの世界よりもアンチーク自転車界の方が友好的な雰囲気があり、それに惹かれたということもあるという。


  現在は銀行を退職し、奥さんのマリーさんと共にル・モンドールで民宿を経営している。その建物はもともとはお金持ちの湯治客のために1907(明治40)年に建てられたが、その後民宿に改造されている(写真1)。外側からみると民宿の看板しかなく全く想像もつかないが、ルグー氏のコレクションはこの建物の地下に保存されている。前庭と家の中に地下室への入り口には何も書かれていないが、わからないようにわざとそうしているとのことであった。

写真1.ルグー氏のアンチーク自転車コレクションが保存されている民宿    『ル・ミラボー』(ル・モンドール)。

  地下室はそれ程広くないが、マシーンが整然と車種別に展示されており、普通の自転車博物館といってもいい程であった。以前は全部で200台程度を所蔵していたが、あまり程度の良くない半分程のマシーンを既に手放し、現在では良質のマシーンのみが残っているという。確かに質の高い自転車が多く、手入れも十分にされており、更にレストアも丁度よい加減で、個人コレクションによく見られがちな、いわゆるレストアされ過ぎたマシーンはなかった。合計で105台あるコレクションの内訳は以下のとおりである。
  
  ドライジーネ   6台 全て複製と思われる(写真2)

写真2.クリスチャン・ルグー氏とドライジーネコーナー。6台全部が複製と思われるが、中央奥のマシーンはオリジナルに忠実にしかもかなり精巧に作られている。

三輪車
5台(写真3)
ミショー型
9台(写真4)
オーディナリー車
12台(写真5)
トライシクル
2台(写真6)
セーフティ車
12台(写真7)
自転車
59台(写真8)
合 計
105台

 各車種の展示コーナー毎にマシーンに合った当時の服装を纏った人形が置かれているため、マシーンだけの展示よりも温かみがあり、雰囲気もより和やかに感じられる。

写真3.三輪車のコーナー。人形が載っているマシーンは1860年代に製作されたと推測される。両足と右手で後輪を駆動し、左手で前輪を操作する。

  

写真4.ミショー型コーナー。一番右側は『ミショー&カンパニー』社製のマシーンでフレームの裏側に1825(製造番号と推定される)の数字をみることができる。


写真5.オーディナリー車のコーナー。


写真6.オーディナリー車のコーナーに続いているトライシクルのコーナー。


写真7.セーフティ車のコーナー。


写真8.   1900年代から第2次大戦前後までの自転車のコーナー。

 ルグー氏はマシーンだけでなく、自転車関連グッズにも同じ程度の関心を持っており、館内には、陶器製人形、お皿、ミニチュア自転車、メダル、置物、ポスター、イラスト、絵画等々も多数展示されていた(写真9)。ミショー型時代(幕末から明治のごく初め)のグッズがかなり多く、収集は本当に大変だったであろうと思われた。
 数年前にムラン(パリから南に47km)市長であったマリネリ氏は自らを記念したマリネリ博物館(マリネリ氏は1949年ツール・ド・フランスで個人総合3位の戦歴を誇る自転車競技の元選手として有名である)を計画し、ルグー氏のコレクションを買い取る話が進んでいたが、契約寸前でご破算になってしまったとのことである。残念ながら詳しい理由は教えてもらえなかった。 
  地元であるル・モンドールの役場や観光協会、更に、町立博物館等に観光の目玉の一つとして自転車博物館の建設を提案したが反応は否定的であった。小さな町なので財政上のゆとりがないというのがその理由とのことであった。現在の場所で一般に開放するという案も検討したが、消防法や行政上のさまざまな理由で複雑すぎ、あきらめたとのことである。
 最終的にはコレクションを手放すつもりのようであるが、現在は宿泊客の中で希望者に限り、“ル・ミラボー(民宿の名前)の秘宝”ということで夕食後に無料で案内するのがなによりの楽しみ、とのことであった。

写真9.陶器製人形やミニチュア自転車等が納められているガラスケース。

  ルグー氏所有のアンチーク自転車コレクションに関する連絡先等は以下のとおり。

 

住所
Espace Vélocipédique
Collection Christian Legout
13, rue Sidoine Apollinaire
63240 LE MONT DORE
France
電話
+33 4 7365 2582
HP
http://lemirabeau.free.fr
メール
lemirabeau@free.fr

  民宿の宿泊客は希望すれば見学できるが、それ以外の場合には要許可。写真撮影についても同様に要許可。
(小林恵三)



Copyright, 1998-2006 Bicycling Popularization Association of Japan. All rights reserved.