イギリス北部に位置するスコットランド地方は、自転車史の分野では、1840(天保11)年頃にペダルにより後輪を駆動する自転車を発明したといわれているマクミランの故郷としてよく知られている。ただ現在では地元イギリスでも確固たる資料がないこともあり、この説を支持する自転車史研究家は少なくなっている。

 スコットランド国立博物館は1865(慶応1)年に科学産業博物館として発足したが、その後王立スコットランド博物館となり、1998年から現在の名称になっている(写真1)。同館が所蔵する自転車コレクションは第2次大戦終了時にはわずか8台しかなかったが、1980年代後半から年に平均して5、6台を購入するようになった。これは、当時の陸上交通機関部門を担当していた学芸員アラステア・ドッズ氏の趣味が自転車であったということと大いに関連している。そのお陰で現在(2006年12月時点)では合計で101台を擁するスコットランド有数の自転車コレクションになった。その内訳は以下のとおりである。

写真1.スコットランド国立博物館。

ドライジーネ(イギリスではホビーホースと呼ばれている)
1台
  (エグリントン伯爵が所有していた由緒あるマシーン)
ミショー型
7台
オーディナリー車
5台
トライシクル
6台
セーフティ車
7台
自転車やタンデム等
75台
合計
101台

 この内、展示されているのはわずか7台であるが、普通に“展示”されているのは1台だけで、残りの6台は2階の天井から吊るされている(写真2)

写真2.    2階の天井から吊るされている自転車(7台の内の6台)。

 ヨーロッパ、特にイギリスの公立博物館に共通しているように思われるが、自転車コーナーを特別に設けて、20台から30台程度のアンチーク自転車を展示するということがなくなったようである。ロンドンの科学博物館やバーミンガムの市立科学技術博物館でもそうであるが、ここでも数台が展示(しかも吊り下げられている)さ れているだけであった。この展示方法に関してはドッズ氏自身もタッチできなかったとのことで、決して満足しているわけではないように見えた。ただ同館は、4640万ポンド(1ポンド=227円とすると、105億3280万円)をかけて、全面的に改修する計画があり、2011年の完成を目指している。この中で、現在では同館の交通部門の部長という要職を務めるドッズ氏なので、自分の意見を反映させて、より納得のいくような展示を提案することができます、と抱負を語ってくれた。計7台の展示車のリストは以下のとおりである。

* 『コベントリー・ロータリー・トライシクル』。1884(明治17)年製。
* ミショー車。1869(明治2)年製。
* ラージ製オーディナリー車。1884(明治17)年製。
* コベントリー『スィフト』セーフティ車。1888(明治21)年製。
* ハンバー製『オリンピア』セーフティ車。1890(明治23)年製。
* モールトン『デラックス』小径車。1965年製(写真3)。
* ストライダ製折りたたみ自転車。1988年製。

写真3.1965年製モールトン『デラックス』小径車
  
 展示されていない残りの94台は館内地下にある倉庫に保管されている。保管方法はいろいろで、天井からそのまま吊り下げられているマシーンもあれば、逆に吊られているのもある。又、資料棚の上に置かれたり、地面にそのまま置かれている自転車もある(写真4&5)。今年中にエジンバラ郊外のより広い倉庫にこの自転車コレクションを移動させる計画とのことで、そこはあくまでも倉庫なので一般に開放はされないが、見学者にとってはより観察しやすくなるとのことである。同館では現在のマシーンも積極的に購入している。これは、それらのマシーンも100年後にはクラシック自転車になるからとのことであった(ドッズ氏談)。
写真4.館内地下にある倉庫。天井からそのまま吊り下げられているオーディナリー車。

写真5.館内地下倉庫。地面にそのまま置かれている自転車。

  スコットランド国立博物館の概要は以下のとおり。

住所
National Museum Scotland
Chambers Street
EDINBURGH EH1 1JF
England
電話
+44 131 247 4422
HP
http://www.nms.ac.uk
メール
info@nms.ac.uk
開館時間
毎日、10h00〜17h00.
入場料
無料。写真撮影は自由であるが、フラッシュを使用してはいけない。
(小林恵三)


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